アトランティスの伝説は、史上最も有名であり、論争を呼ぶ伝説のひとつです。最古の記録はギリシャの哲学者プラトンによるもので、それ以来、沈んだ大陸の物語は史実か否か、問いかけが続いてきました。

プラトンは(ティマイオスとクリティアスの会話の中に登場する)自分の説を史実と見なしていたと考えて差し支えないでしょう。プラトンはこれを全くの真実だと断言しており、そしてプラトンとその師ソクラテスが真実に重きを置いていたということは良く知られています。

プラトンの主張によれば、彼のアトランティスに関する説明はエジプトの都市サイス(歴史学の重要拠点となっていた地)の神官からもたらされたもので、アテネの立法者にしてギリシア七賢人のひとりソロンに対しても語ったものだということです。神官によれば、(古代、ジブラルタル海峡の両側に建っていた)ヘラクレスの柱の真向いにあった巨大な島でした。旅行者はアトランティスを拠点に、様々な島やさらに西の大きな大陸を行き来することができました。この大きな大陸というのは、この記述に当てはまるアメリカ大陸のことであると、多くの人が述べています。

プラトンによれば、アトランティスが沈んだのはソロンの時代より9,000年前、つまり今からおよそ11,500年前の紀元前9500年です。これは直近の氷河期の終わりに相当するため、大変興味深いことです。科学者たちによれば、直近の氷河期には海面は現在より130メートル低く、陸地の広大な部分に様々な人々が住んでいました。また、氷河が急速に溶けたことで海面が急激に上昇したということです。その時に起こった一連の地殻変動で、地球の表面が大きく変わったのです。

「西洋哲学の父」プラトンは、他の関連情報も残しています。彼の説ではアトランティスは地殻の大変動によって滅んだわけですが、面白いことに、古代の文明はほとんど全て、洪水によって我々以前の人類が滅亡したという言い伝えを持っているのです。この洪水伝説にはとても多くの共通点があり、同じ一つの話に関連していると考えられます。下のとおり、異なる民話の共通点を挙げる調査をしてみました。それぞれの言い伝えは、説明が短くて分かりやすくなるよう、文化もしくは地方ごとにグループ分けしてあります。また、簡潔さを重視して、ストーリーを単純化しました。

a ヒンドゥーの言い伝え

インドの洪水伝説は、シャタパタ・ブラーフマナ(ヴェーダの解説書)、マハーバーラタ(宗教叙事詩)、バーガヴァタ・プラーナに載っています。主な内容は下記の通りです。

・主人公はマヌと呼ばれる徳の高い男性であり、洪水から逃れる。
・魚の姿をした神の助言で洪水から逃れる。
・生き延びた人間、動物、植物がやがて地上で繁栄する。
・主人公は船を造って助かる。

b メソポタミアの言い伝え

メソポタミアでは、洪水は完全に史実とされていました。ウトナピシュティムの物語(紀元前1700年に書かれたが大半は消失し、13パーセントのみが現存)とギルガメシュの物語を通して、洪水の伝説は現代の私たちまで届いています。どちらの物語も、下記の共通の内容を含んでいます。

・人類がとても騒がしいため、神々は洪水で人類を滅ぼそうと考えた。
・エンキ神は人類を憐れみ、そのうち最も優れた者ウトナピシュティムを助けようと決めた。
・エンキ神は、あらかじめ決められた寸法の大きな船を作るようウトナピシュティムに命じた。
・ウトナピシュティムと家族、家畜たちは救われた。

c ユダヤ教・キリスト教の言い伝え、聖書

メソポタミアの言い伝えとたくさんの類似点があり、メソポタミアの話をベースにしたと多くの歴史家が主張しています。聖書の中の言い伝えの要点は次の通りです。

・人類が堕落していたため、創造主は人類を滅ぼそうと考え、洪水を起こすことにした。
・創造主はノアに方舟の造り方を教えた。
・創造主は方舟に誰が乗るべきかを示した。近親者、あらゆる動物をひとつがいずつである。

d エノク書

エノクは、(少なくとも、この書の中では)ノアの祖父です。この書はキリスト教では外典であるため、創造主から着想を得たにしても聖書の正典には含まれていません。古い伝統を踏まえた新しい特徴は下の通りです。

・人間の悪い点(邪悪さ)が強調されている。人間は天使と悪魔の力を発見し、その力を悪い方へ使った。
・空に現れた巨大な輝く戦車の記述がある。彗星か流星のことだと思われる。
・星々がこれまでの軌道を変えるという、地軸が動くとも取れる描写がある。

e 中国の言い伝え

大災害にまつわる言い伝えが何通りかあります。最も関連があるものは下記の通りです。

・選ばれた者への神からの警告はなかったが、兄妹二人が生き残り、新しい人類の祖となった。
・大災害は、神同士または神と人の争いの結果起こった。
・劇的な結末として、地軸が動いたことへの言及がある。

f ギリシアの言い伝え

ギリシアの詩人ヘシオドスの作品「仕事と日々」(ある種の人類史)、あるいはその情報を補完したアポロドロスの叙述の中に、人類を滅ぼした洪水についての記述があります。主な内容は下記の通りです。

・デウカリオンとピュラーの夫婦は、ゼウスが人類を滅ぼすために計画している災厄についての警告をプロメテウス(人類に火をもたらした巨人、知性のシンボル)から受ける。
・デウカリオンは巨大な方舟または箱を作り、重要な物を全て入れた。
・ゼウスは大雨を降らせ、テッサリアの山々に集まった者たちだけが助けられた。そのときテッサリアの山々は裂け、水が全てを覆いつくした。

g アメリカの言い伝え

アメリカには、洪水の言い伝えや神話が最も多く残されており、北極圏からチリまで見ることができます。特徴は以下の通りです。

・最も多く見られるパターンとして、人間は船を使うよりは高い山の頂上へ逃れることで生き延びる。
・ほとんどの神話で、巨大津波が災厄の原因とされている。
・人々は、神々よりも、種々の不思議な動物から重大な危険の警告を受けるパターンが多い。
・天罰の理由は、人間が様々な神の機嫌を損ねたためであることが多い。
・「天国の柱」が折れたという表現がある。アステカ民話のいくつかにおいては、地軸のずれについて描写されている。

今日の学術界では、アトランティスと大洪水の話は、現在信じられていることと根本的に矛盾しており、歴史的価値はないとする意見がほとんどです。学術界にはほとんど信条と言えるほど染みついた見解や考えが確立しており、そこからはみ出たものは全くのファンタジーとみなされます。しかし、定型となったこの説に当てはまらない考古学的発見はたくさんあり、いくつかは『人類の隠された起源』(訳注・原題 “Forbidden Archeology: The Hidden History of the Human Race”)という興味深い本で詳細に取り上げられています。しかし、私たちの社会は自らの知識とギャップのあるものを受け入れたがらないため、こうした発見が一般の人々に認知されることはほとんどありません。アトランティスが少数の人々の興味を引くにとどまっているのも、そのせいかもしれません。しかし、これは危険な風潮です。社会が自分たちは何でも知っていると思った時、自分たちの知っているわずかなことを忘れ始めるのですから。


元記事URL↓
https://library.acropolis.org/the-myth-of-atlantis-and-the-universal-flood/

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