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時代を超えたスポーツの魂

ソフィア・ヴェヌティ著、長谷川涼子訳

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スポーツとは、個人を成長させるだけでなく、日々の活動を通して人類を進歩させる責任をも持つ、社会的・世界的な概念です。実際、古代の最も偉大な哲学者の幾人かは、身体的な教育とスポーツが大きな役割を果たすことでバランスよく調和した人格を養う重要性を認識していました。

西洋においては、例えばソクラテス、プラトン、アリストテレスが、スポーツを知恵・勇気・節制・正義といった善の追求の助けになるとみなしていました。彼らの教育システムは、身体面、道徳面、知性面における教育をひとまとまりで、生徒たちに施すものでした。実際、初めは全ての課程を屋外の場所で行うものとされており、これは数学、物理学、天文学、弁証法と、詩、音楽、軍事教練、「体育(ランニング、レスリング、ボクシング、球技その他の身体種目)」を調和させるためでした。ソクラテスとプラトンはこの空間を「ギュムナシオン」と呼び、後にアリストテレスは「リュケイオン」を設立しました。現代の教育機関(ほとんどの場合は学術教育機関)を表す名称が、西洋では多くの場合、古代ギリシャの運動場から来ているというのは、ずいぶんな皮肉です。

プラトンにとって、身体的な教育には、人間性を育成する目的がありました。彼は「音楽・文芸と体育による教育ということを設定した人々も、(中略)両方とも魂のことを最も重要な目的として設定したのだろう」(引用元:『プラトン全集 11』1976年、岩波書店、pp239-240)と述べています。プラトンは、調和的な教育の一部としての身体訓練は、優れたアスリートになるためだけの身体訓練訓練とは大幅に異なると明言しています。つまり、体だけを鍛えることは、人格における他の側面に費やす労力に対してアンバランスのもとになり、アスリートが「カロカガティア」の状態に達するのを邪魔し続けることになります。「カロカガティア」とは古代ギリシャの概念であり、身体的な美しさと道徳的な善の理念を合わせたものです。これは、人間の物質面と精神面の完全さと調和によって得られる、高貴な人間的行為の理想であり、体と心の調和の理想でした。これはギリシャ語の単語「カロス(美しい)」と「アガトス(善い)」からなる言葉です。この言葉は、肉体と魂の両方が調和した、完全な人格の理想を具体化したものです。同様に、アリストテレスは二コマコス倫理学において、精神面であれ肉体面であれ行き過ぎた一方的な鍛錬を否定し、身体だけを鍛えることは、人間の人生に意味を与えるのには不充分であると信じていました。

東洋においても、スポーツは人類の発展の手段とされていました。例えば、古代中国では、均衡と調和の哲学に格闘技と弓道が取り入れられており、こうした規律を鍛えるのに重要なものとされていました。インドでは、体の健康を高めるため、そして集団としての感覚を養うため、カバディやコーコーといった伝統的なスポーツを行っていました。アフリカ大陸の多くの地域には、ボトあるいはウブントゥという概念があり、これは「私は他の人たちに囲まれた人である」という人生の哲学で、寛大さ、人間性、思いやりの側面を表していました。インドでは、学究と日々の活動を通じた精神の訓練や精霊界への接続を含むヨガの全体から見れば、ヨガによる身体の鍛錬の実践は小さな一部に過ぎません。多くの古代の伝統において、スポーツ活動は、音楽、ダンス、力強い象徴的な衣装や動作、リズミカルな詠唱、儀礼、儀式的な試合、自然への関与と結びついていました。これらの活動の目的は、参加者の身体・心・魂を、祖先、文化の歴史、古代の知恵、自然の魂、神(々)とつなげることでした。

したがって、スポーツと身体教育が個人の成長を目的とし、個人が価値観と内面の向上を通じて自己、家族、所属する集団に積極的に貢献できるようにしているのは明らかです。19世紀後半にオリンピックが国際的な活動として整えられ、オリンピズムが理念として据えられるまで、この価値観は時とともに薄れていました。

オリンピックは、遅くとも紀元前776年にはギリシャのオリンピアで行われていました。当初は徒競走やレスリングが主な競技で、その後何世紀にもわたって様々な分野に拡張し、身体面の優秀さ、運動面の美徳の追求に対するギリシャの傾倒を示しています。オリンピズムは、世界の発展、国際的な理解、平和的共存、社会・道徳教育を重視する社会哲学です。歴史や世界を通じたあらゆる大きな社会文化運動と同じく、この社会哲学を実行するための組織・仕組みの構築は、原則と象徴的要素を制定することから始まりました。

オリンピズムは、いくつかの簡潔な表現で、理想的な人間のあり方とその目指す先をとらえています。オリンピズムの勧める概念とは次のようなものです。

・国際的な平和、寛容、理解、文化的連帯と

・恒久的な人間の友情の連帯を生み出すという視点を持って

・お互いの尊重、公正、正義、平等のもとに

・スポーツ競技での競争における努力を通して

・卓越と達成に向かう

・あらゆる面で調和した、個人の人間的発達

これらの理念は、オリンピックのシンボル、モットー、讃歌、宣誓、聖火リレーの中で、より深く表されています。

オリンピックのシンボルはつながった5つの輪であり、オリンピズムを視覚的に表現しています。この輪はオリンピックの唯一の公式シンボルで、1913年にピエール・ド・クーベルタンがデザインしました。5つの輪は5つの大陸を表し、輪のつながりは、オリンピズムの普遍性、オリンピックのために世界中から選手が集まる様子を表しています。オリンピック旗には白地にこの五輪が描かれ、旗の6色であらゆる民族を表せるようになっています。

オリンピックのモットーはラテン語の “CITIUS, ALTIUS, FORTIUS” で、「より速く、 より高く、 より強く」を意味します。この言葉は、試合の中で最大の力を発揮できるよう選手たちを勇気づけるものです。これは、最も重要なのは勝つことでなく参加すること、全力で公正にプレーすることであり、人生において肝心なのは相手を負かすことでなく充分に戦うことである、という理解に基づいています。自分のあらゆる面でベストを尽くし、優れた人間性のために努力することは、立派なゴールにつながるのです。

オリンピック讃歌と宣誓は、オリンピックの開会式の公式プロトコルの一部です。宣誓を行い、讃歌を歌うのは、オリンピック旗の角を捧げ持つ開催国の人々です。私たち人間にとって、宣誓を行うことにはどんな意味があり、何千もの人々と一緒に讃歌を歌うことは何をもたらすのでしょうか? (アメリカやイギリスの裁判で取り入れられているような)宗教的・封建的な意味合いはさておき、宣誓は正義と真実の根本に対する契約であり、私たちの高次の自己に対する契約でもあります。私たちが低次の自己の声を抑えて高次に耳を澄ます時、高次の自己はこうした根本とつながるのです。嘘や反則などでこの宣誓を破ることは、周りの人々への裏切りだけでなく、私たちの真実の自己と、この宇宙を司る宇宙の原則への裏切りでもあるのです。

旗と同様、聖火と聖火リレーはオリンピックの要素として最もよく知られています。現在では、聖火は、火の象徴のもとに人類がいつも連帯しているというプラスの価値を表しています。この火はオリンピアで灯され、古代ギリシャでのオリンピックの起源を呼び起こすとともに、古代と近代のオリンピックのつながりを際立たせます。そこから、聖火は何千人ものリレー参加者の手で開催都市まで運ばれ、その道中ずっと、オリンピックの開催を告げながら、平和と友愛のメッセージを運び続けるのです。聖火はまた、通過した地域の文化と自然の豊かさをも伝えてゆきます。より深く掘り下げると、火とは変化、浄化、闇への勝利を象徴するものであるため、オリンピックは参加者にとって、自己の試練の克服、自己の「低い」面を「高い」面に揃えるための美徳の育成の機会になります。さらに、神の火を盗んで人類に与えたプロメテウスの神話にならい、私たち人間の持つ厄介な二元論について考えることもできます。つまり、人間は良い事にも悪い事にも使える道具を与えられていますが、それをどう使うかは私たちの道徳的な選択次第なのです。

この厄介な性質がオリンピックや他の国際スポーツ試合の原則に従わない働きをしてしまうのは、時々見られることです。資本主義、政治的な投資、あるいは対立により、個人にしろ集団にしろ、この原則に反する行動をとってしまうことがあります。幸運にも、私たちは誰しも、別の方法を認識して行動するチャンスがあり、そのことで私たちの与える影響が小さくとも大きくとも構わないのです。

もっと知りたい場合は:

Reid, H., Athletics and Philosophy in the Ancient World (Routledge, 2011)
Kretchmar, R.S., et al., History and Philosophy of Sport and Physical Activity (Human Kinetics, 2017)
International Association for the Philosophy of Sport website https://iaps.net/

元記事URL↓
https://library.acropolis.org/the-timeless-spirit-of-sport/

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